「何がいいかなあ…」
「そうだね…って…あ!」
ヴァンエルティアの食堂で悩んでいるレイアとジュード。
その目の前を通りかかるある人物。
「レイア!あれならきっと…」
「そっか!うん、そーだね!」
優しい貴方へ
「くれあー。おやつちょーだいっ」
「いらっしゃい、。今日は摘み立ての野いちごのジャムを使ったパンケーキよ」
「わーい♪ざぴぃ、いっしょにたべよー」
「キキッ♪」
美味そうにおやつを頬張る。
口いっぱいに詰め込み、まるでハムスターのようだ。
時折、ザピィに欠片をやりながらおやつの時間を堪能していた。
「ー?ちょっといーい?」
「う?」
そこへレイアがやってきた。
「あのね、。お願いがあるんだけど、聞いてくれるかなあ?」
「なーに?」
「実はね…」
「とゆうわけで、このクエストに同行してほしいんだけど」
「私で宜しければご同行いたしましょう。メンバーはジュードさんとレイアさんだけですか?」
「ううん、後一人…」
「おっまたせー!」
甲板で話していたローエンとジュードのもとにを連れたレイアが現れた。
「おやおや、さんもご一緒でしたか。今日はよろしくお願いしますね」
「あいっ、じじしゃま」
「ほっほっほ、孫が出来たみたいですな」
和やかなムードにレイアとジュードは影でガッツポーズした。
『上手くいきそう!!』
「今日の依頼は…キノコ十本と薬草五本、それから小麦三本だね」
「また大量だねー。よーし頑張るぞ!」
「あいっがんばる!」
「それでは各自分かれましょうか」
森に入った面々は各々目的の物を採取し始める。
小さいはローエンの隣りでせっせと薬草を探していた。
「じじしゃま、これなーに?」
「これはヒメキクの実です。黄色い実は酸っぱいから食べてはダメですよ。赤くなったら甘くなりますからね」
「じゃあこれは?」
「これはアオユリ草ですね。葉を煎じて飲めば鎮痛剤になります」
ほのぼのと採取している二人を見て、レイアは笑みを浮かべた。
「ねえ、ジュード。ああして見ると本当の家族みたいね」
「そうだね。ローエンも楽しそうだし、計画は成功だね」
ぼちぼち、採取も終わりにさしかかった時森の奥から異様な空気を感じた。
「…なんだ?」
「これは…皆さん!何かが来ます!!!」
茂みの中から現れたのはウルフにボア、ゲコゲコとベアだった。
どれも興奮している様子で、今にも飛び掛ってきそうだった。
「どうしてこんなに…」
「恐らく、マナの影響でしょうね…。最近はマナ不足で餌となる木々が少なく住処を移動する魔物も少なくないでしょうから」
勢いよく飛び出してきたウルフをジュードが押さえ込む。
根を構え、レイアも応戦する。
「さん、私の傍を離れないように」
「あいっ」
ローエンの影に隠れながら、呪文の詠唱を始める。
しかし、そんな無防備な状態のに背後から近づいて来たもう一体が襲いかかる。
「危ないっ!」
「きゃう!!」
「っ!ローエン!!」
ベアの爪がを襲った。
幸い、ローエンがかばい直撃は免れたが風圧で額をかすり出血してしまったのだ。
「さん!!しっかりしてください!」
傷は浅いが、出血が多い。
小さい体のには少しの出血も大事となる。
頭に衝撃を受けたことと、出血では意識を失った。
「!!しっかりして!!今回復するから!!」
レイアが急ぎ、回復術を試みる。
「…少々、オイタが過ぎたようですね」
ローエンはを静かに寝かせると、魔物の群れに向き直った。
「私の大切な子を傷つけた礼をしてさしあげます」
心地良い振動、感じる温もり。
はそっと目を開けた。
「…じじ…しゃま…?」
「さん!?気が付きましたか!」
「!良かった〜!!!」
「痛い所は無い?気分はどう?」
はローエンに背負われていた。
気絶した為、記憶が途中から無いは今の現状が理解出来ていなかった。
「ローエンがね、あの後魔物を一掃しちゃったんだよ」
「にも見せてあげたかったな。ローエンの勇姿」
「ホッホッホ。可愛いさんの為なら朝飯前ですよ」
「うえ〜〜〜〜〜」
なんと、突然が泣き出してしまった。
「ど、どうしました!?まだどこか痛みますか?!」
「どうしたの!?」
「…が…じじしゃまをおたしゅけ…しなきゃいけないのに…。きょうはがおてつだい…うえ〜〜〜」
ぼろぼろと大粒の涙をこぼす。
の言葉が何を意味しているのか解らず、ローエンは戸惑っている。
「れいあ〜〜じゅーどぉ〜〜…ごめんなしゃーい…」
「お二人共これは一体…?」
「「あはは…」」
困惑するローエンと号泣する。
この光景を見て、二人は苦笑いを浮かべた。
「実はね、日頃お世話になっているローエンに休息してほしかったんだ」
ヴァンエルティア号へ戻ってきた一行は、食堂で一服していた。
そこで改めて、事情を説明する為ジュードが口を開く。
「でも、ギルドにいたら自然と仕事しちゃうし。それなら、気分転換も兼ねて森にでも行こうかなって」
「クエストって言ったのは本当。ただ森に行くだけじゃ、怪しまれちゃうかなって思って」
「成程…では、何故さんはあんなに落ち込んでいるのでしょうか?」
少し離れた席でルルを抱きしめながらうつむいている。
泣き止んだが、機嫌がまだ治らないようだ。
「に同行してもらう時頼んだの。“今日一日、ローエンに日頃のお返しがしたいからも助けてくれる?”って」
「多分、責任感の強いだから自分がローエンに迷惑をかけたって思ったんじゃないかな」
「そういうことですか…」
ローエンはゆっくりの方へと足を進めた。
「ナア〜〜〜」
「………」
ルルがローエンの方へ視線を向けるも、はまだ振り向かない。
「さん」
「……」
「散歩に行きたいのですが、生憎一人じゃ寂しいんですよ。良かったら一緒に行ってくれませんか?」
「…おしゃんぽ…?」
「ええ。天気が良いので、星流れの泉なんて良いですねえ。のんびり日向ぼっこでもしましょう」
「…おしゃんぽいったら…じじしゃまおやすみできる?」
「そりゃあもう。何よりの休息です」
「……いくっ!!」
ようやく笑顔が戻った。
ローエンと手をつなぎ、意気揚々と歩き出す。
けれど、途中でピタッと足を止め振り返る。
「じゅーどっ、れいあ!!はやく!!」
「わ、私達も行っていいの?」
「みんなでいこっ!」
「そうだね、皆で行こう」
「ナア〜〜〜〜」